2010年10月12日

区間格差がなければ、大阪市分割案でもいいのか

 大阪市分割案の区間格差=財政調整の問題を指摘し、大阪市分割案を撤回させたのは、大阪市がようやく挙げた白星なのだと思います。そして、そのことで、大阪都構想の提案自体を見直す機運へ繋げられたのならば、何よりなのだと思います。

 でも、あえていいます。あまり、うまくない点を白星にしちゃったのではないかと。
 区間格差は、大阪市分割案でこそ明確な問題点です。大阪都構想で本当に問題がないのかは分かりませんが、「大阪都構想であれば、財源調整を行うことができるので、問題はない。」ということはできます。(制度説明をしないなら、問題があっても無いと言い張ればいいし、何も内容を考えてないなら、やっぱり問題は無いと言い張ればいいだけです。)

 大阪市は、内容がある程度推測できるから大阪市分割案を標的とし、一番問題を明確にしやすいから、区間格差を取り上げたのだと思いますが、その先を考えると、あまり良くはないのです。
 大阪市として、区間格差がなければ、大阪市分割案でいいのかと、そんなことはないし、大阪市分割案が撤回されたなら、大阪都構想でいいのかというと、そんなことはないはずです。
 でも、区間格差を標的にしすぎているために、大阪市分割案が撤回されると、何がどうダメなのか、全然、伝わってこないのです。
 二の矢、三の矢が、次々準備されてるなら、こんな心配は杞憂に終わるのですが。

 大阪市分割案の区間格差が焦点になりすぎた所為で、「逆は必ずしも、真ならず。」という当たり前の論理が、忘れられてそうなことも、心配な点です。

 「大阪市分割案では、分割後9市の財政調整に問題があり、行政サービスが維持できない。」は良いとして、「大阪都構想では、財政調整を行うことが可能だから、行政サービスは維持できる。」という印象を持たれそうですが、ちょっと待ってください。
 「財政調整を行うことが可能」ということと、「行政サービスが維持される財政調整が行われる。」とは、全然同じじゃありません。だって、どんな財政調整がされるのか、何も示されていないのですから。「法的な制限がない」と「最適な財政調整が実施される」の間には、天と地ほどの差があります。まして、橋下知事の考える「最適な財政調整」が、市民にとって「最適な財政調整」とは限らないことが分市案の撤回で証明されたばかりです。そんなことは、具体的な内容が示されて初めて、検証可能になることです。

 それから、「財政調整がされたら、行政サービスが維持される。」という話にもなってしまいそうですが、そこもちょっと待ってください。
 都区にせよ、新市にせよ、市の分割の影響って、そんなに簡単なものじゃないです。財政調整がぐちゃぐちゃなら、そりゃあ「行政サービスは維持されない。」でしょうが、「財政調整がされても、行政サービスが維持できない。」という可能性は、大きすぎるくらいにあります。これも、制度が具体的に示されて初めて、検証可能になることです。

 もうひとつ、試算において「現行予算額が確保されないから、行政サービスが維持できない。」と説明した訳ですが、「現行予算額が確保されるなら、行政サービスは維持できる。」という印象を持たれそうなところも、ちょっと待ってください。
 都区にせよ、新市にせよ、大阪市分割の影響をなめちゃいけません。

 どちらも、マスコミが報道時に、一番気を付けなければならないはずですが、どうも、大阪市分市案撤回の記事を読んでると、ごっちゃになってそうです。

 このブログでは、大阪都構想にせよ、大阪市分市案にせよ、大阪市を分割することで現行の行政サービスが維持されなくなる理由として、次のようなものを挙げてきました。

○大阪市が、都区(又は新市)に分割されることで、大阪市の基礎自治体業務でのスケールメリットを失い、コスト増になる。予算額が増えないなら、行政サービスは低下する。
○大阪都構想が検討しているであろう都税制度は、大阪市分割後の都区が今まで通りの予算額を持てることを保証しない。(というか、普通に考えれば、大阪市内の市税収入が都庁や元大阪市以外の都区へ配分されることになって、相当減少することが予想される。)
○大阪市が都区などの分割されても、下水道事業など分割できない業務が大量に発生する。これらは、8都区での共同事業になると思われるが、意思決定の一元化を失い、責任の所在が曖昧になるなど、現状よりも、市民にとっての業務レベルの低下が懸念される。
○大阪市の一般会計2.5兆円(特別会計を含むと、5兆円)の公債残高の取り扱いが分からない。この取り扱いによっては、それだけで、財政破綻する都区が続出する。
○大阪市の人員をどの程度、リストラするか、特に、都制移行前に、どれだけ行うかは、都区の行政サービスがどのようになるかに、大きく影響する。

 これで全部とは思いませんが、どれひとつとっても、「現行行政サービスを維持できるか。」に十分影響を与えると思っています。
 今回の大阪市分市案撤回が、こういった様々な問題から目を逸らしてしまう結果にならないことを強く望みます。


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posted by 結 at 01:18| Comment(3) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 橋下さんは、府会本会議の一般質問への答弁で、大阪都構想に対する対案を提示せよ。対案が出されれば議論してもいい。みたいな発言をされていますが、自らの説明責任を棚に上げて、何を言ってるのでしょうか。いつもの手法で、相手の案を批判することで、自分の優位を見せかけるあと出しじゃんけんを決め込むつもりでしょうか。

 いつも気になるのは、新聞等のマスコミ報道が、このようなときに事実関係だけを淡々と伝えるのみにとどめていることです。なぜ、誠意のない橋下さんの姿勢をもっと批判しないのでしょうか。

 さて、今回の分市論撤回のポイントになるのは、橋下さん一人ではなく、(事実かどうかは別として)橋下代表、市会議員、府会議員みんなで議論して結論を出したと言っている点です。特に、分市よりも都構想のほうがよいという市会議員からの意見があったという報道がされてます。
 維新の会に行かれた市会議員の方は実は腹の中では分市案にも都構想にもどちらも賛成していないのではないかと見ていたのですが(なぜかと言うと、大阪市会において、大都市税財政制度特別委員会や議員提出議案で提出した議員定数削減条例等の提案趣旨説明など、機会あるごとにことごとく都構想には一言も触れず、かえってわざと議論を避けているとしか思えない態度を貫いているからです)、これでもう逃げられなくなった、とうとう腹をくくったか、と思っています。

 今日(10/12)行われる大阪市会財政総務委員会で条例案に関する質疑が行われます。議員提案に対する質疑なので、通常の、議員対市側の構図ではなく、議員同志による議論が交わされるという、非常にレアな形の質疑となります。質疑に立つ既存の会派はいずれも幹事長・団長クラスを財政総務委員に投入して、迎える維新の会も団長を委員に立てて真っ向勝負に臨むという、いわゆるがちんこの委員会になりそうです。
 結さんが挙げられたように、ちょっと考えただけでも都構想に対する疑問点は山ほど出てきます。その一端だけでも議員間で議論がされて、マスコミ報道されることを期待しています。恐らく、維新の会からは明確な答弁は出ないと思ってます。当然課題はある。これから検討するつもりだ。一緒に大阪のために考えていきましょう。ぐらいの答えしか出てこないのではと思っています。
 それでも、今まで逃げっぱなしだった維新の会を土俵の上にやっと半分ぐらい引っぱり上げることができるのかなと思っています。
 
 今まで橋下さんは、僕ら政治家は大きな方向性を出すのみで細かな制度設計は選挙で勝ってから役人が考えればいい。と言ってました。維新の会に行かれた市会議員の方々は、ムードとスローガンのみで、橋下旋風だのみで選挙には勝たしてもらって、(恐らく問題百出するであろう)詳細な制度設計はあとからする。(ちょっとひどい言い方をあえてするなら)問題が多すぎて都構想は断念となれば元に戻って万々歳だ。などと思っているのではと勘繰っていましたが、今回の都構想一本化によって、そういう姿勢で突っ走ることも恐らくできなくなったのではないかと思います。
 
 どうか、維新の会には誠意ある態度で議論に臨んでもらいたいし、既存の会派の方々にも、問題点を率直にぶつけてもらって、市民が大阪の将来について考えるための種をいっぱい蒔いてほしいと思っています。
 
 結さんがブログで訴え続けているように、私も今の状況を憂いてやまない者の一人ですが、議論を深めることなしにムードだけで選挙に突入してしまうことのないように、市民の代表である市会議員の皆さんの真摯な議論に期待しています。
Posted by bafuken at 2010年10月12日 04:26
こんにちは いつも鋭いご指摘に感服しております。

今回の分市案撤回については、おっしゃるとおり分市の諸課題を都構想で解決みたいな・・いつもの「すり替え」かな?と見ておりましたが、そうであれば、大阪市が反論し易い分市案をギリギリまで引っ張っておくことの方が得策なはず。
知事は市の発表後に大阪市の試算を無茶苦茶として府でも試算する旨発言していたので、この数日間に府においても試算しているでしょう。
恐らくは、市と違わない結果となったのでしょうが、今回の撤回はあまりにも早すぎます。
(ただ、橋下氏の「平松市長は交付税制度を全く理解していない」という支離滅裂ともとれる発言には裏があるのかと心配ですが・・)
いずれにしても、早々に撤回することで、都構想1本で議論せざるを得なくなってしまいましたね。

もともと分市案が出てきた理由について、都構想では交付税が都に入り各区に分配するため「区の独立性が保てない」と説明し、さらには分市は現東京都区制の諸課題を解決する大阪都構想のめざす最終的な姿と説明していたように記憶しています。
これは、都構想では「都の独立性が保てない」という問題を露呈したことと思います。

あの強かな橋下知事にしては、分市案の発表(単独行動?)から今回の早々たる撤回は、大失敗であったと考えます(笑)
さらに、この都構想においては、大阪市だけでなく堺市など他市を巻き込む議論が必要となってきますが、あの堺市長ですら、慎重な意見を述べています。

http://mytown.asahi.com/areanews/osaka/OSK201010070165.html

これまで平松市長一人を「敵」としていましたが、その敵が増えることには、多くの府民も「?」となってくるのではないでしょうか・・
Posted by 小市民 at 2010年10月12日 19:36
bafukenさんへ

府議会での「大阪都構想に対する対案を提示せよ。対案が出されれば議論してもいい。」は、何言ってるんだかと思いました。府民に説明する気は、全然ないようですね。こんな暴言がまかり通る世の中になってしまったことが、恐ろしいです。

でも、マスコミは、そんなに当てにしても、無理です。人気が落ちてくれば、思いっきり叩くでしょうが、それまでは、腫れ物を扱うような対応でしょう。
ぷいぷいでの大阪都構想の説明に、橋下知事が批判した後の番組での慌てっぷりを見ていると、そう思います。権力に立ち向かう報道マンなんて、期待しちゃいけません。

多分、大阪都構想について、橋下知事が説明をするとすれば、ちゃんと説明しないと選挙で勝てないと、民意を判断した時だと思っています。
大阪都構想のことをちゃんと知ることは、大阪都構想を支持する人にとっても大切だと思っています。
民主主義ですから、最後は民度が問われます。説明を求める声が広がることを切に願います。


小市民さんへ

大阪市分割案の撤回が早かったのは、元々、分割案が市議の支持者に、かなりの批判を受けてたからではないでしょうか。大阪都構想でも、大阪市がなくなる訳ではないというために、大阪市市議は、大大阪市構想と呼び変えているようですから。
そういう中で、再生団体転落の見込みの記事で、支持者から不安の声が沢山届けられ、早々に収拾をつけなければならなかったのかなと、思っています。7月に選挙のあった生野区など、地域の発展を約束してたのに、再生団体落ちでは反発はすごかったでしょう。

堺市長は、大阪都構想には、元からかなり慎重な立場です。堺市が消滅なんて話、大阪市民より市民の反発は大きいと思いますから。
ですから、どう転ぶかは、堺市も来年の統一地方選挙の結果次第でしょう。堺市議会で、維新の会が大きく勢力を伸ばせば、市長の意見は、かなり変わるかもと想像してます。
Posted by 結 at 2010年10月13日 02:30