2010年10月06日

区役所への分権をどう考える?

 前回、市役所改革のことを書いたので、市役所改革と関連した話題を、1〜2点取り上げてみたいと思います。
 まずは、都区制であれ、分市であれ、大阪市の分割には反対と書いてきましたが、区役所への分権をどう考えるかです。

 わたしは、政令指定都市という制度は、かなりメリットの多い制度だと考えています。
 それは、一般的に「市」の業務とされるものの中には、スケールメリットの働き易い事務が沢山含まれています。でも、スケールメリットをひたすら追求すると、市民から身近な距離に市役所の窓口を設けて、丁寧な対応をすることが難しくなってきます。
 一般の市では、スケールメリットの追求を多少抑えて、市役所の窓口が遠くなり過ぎないようにします。ただ、30万人規模を適正とする考え方では、スケールメリットの追求に多少偏っている気もしますが。
 政令指定都市では、スケールメリットの働き易い事務は市役所が担当し、市民に身近な部分の事務を区役所が担当することで、スケールメリットを十分に享受しながら、区役所の窓口が市民から遠くなり過ぎないようにすることができます。大阪市の場合、1区役所は平均すると10万人規模になります。(大阪都構想の場合、都庁と都区といっても、都庁はスケールメリットの働き易い事務を市役所の代わりに担当したりしないので、政令指定都市のような市の業務の機能的分担はありません。分市に近いと考えた方がいいです。)
 なお、ここでいう「市役所の窓口」というのは、単に物理的な窓口だけでなく、個々の市民を対象とした、様々な業務のことです。

 ただ、「区役所への分権」という視点で考えた時には、わたしは、大阪市は、もう少しだけ、区役所に予算などが移った方がいいように思っています。
 理由は、現状では、大阪市内の行政サービスを一律とし、市民が平等に行政サービスを受けられることに重点が置かれすぎ、区役所が市民から受けた要望へ柔軟に対応していくことを難しくしていると思うからです。
 ただ、このことは、市民の側も、住む区によって受けられる行政サービスや区役所での対応に多少の差が出てくることは、受け入れる必要はあります。とはいっても、大阪都構想とは違って「多少」の範囲ですが。

 どの程度の「区役所への分権」がいいでしょうか。
 わたしの考える「好ましい程度」は、一点目として、市役所での行政サービスの一部を圧縮し、各区10億円程度を区役所の裁量で使えるようにすることです。(大阪都構想では、都区の予算はもっと大きくなりますが、それより更に大きな現状の行政サービス全体を引き受けることになるので、現状の行政サービスに大鉈を振るわない限り、実質、区役所の裁量で使える予算は出てきません。それどころか、予算が不足する可能性も高いです。)
 ただし、どのように使うかは、ある程度、事前に決めて、他の予算と一緒に市議会の承認を受けることは、当然必要です。

 もう一点として、市の条例・規則で「市長が特に許可できる。」としていることの一部を、区長もできるようにすることです。例えば、税金や保険料の減免や福祉サービスの追加的な決定など。ただし、そのことで不足する財源は、区役所の予算で賄う考え方を採るようにします。

 現在の大阪市の行政サービス(より、やや減らしたもの)に、この程度の区役所の裁量によるサービスを加えれば、大阪市としての一定レベルの行政サービスを保障しながら、区役所が市民と直接接することで出てくる要望に柔軟を対応できるようになるのではと考えます。
 そして、次に考える必要があるのは、どのようにして、区役所が裁量を持った分を、区民の意見に副ったものとしていくかです。

 区議会などで、区民の代表を区役所へ送り、意見反映をするという方法は、不要だと思っています。
 一番目の理由として、区の行政に関連した情報は、区役所が一番持っているからです。
 それは、区役所で業務をしているというだけでなく、問合せ、苦情、要望といった形で、区民から一番生の意見を受けているのは、区役所の窓口だからです。区長は、それらの情報をきちんと報告する体制を作るだけで、十分な情報を得ることができます。
 区議会議員を選んだとして、区役所窓口に寄せられる区民の声以上に、網羅的で切実な「区民の声」を区議会議員が届けることは難しいと思います。

 二番目として、区議会を置くことで(市議会を否定してまで)期待するほどの区民の意見反映ができるのか疑問を持つからです。
 現状の市議会は、市政に対するチェック機能として、一定役割を果たしているとは思います。でも、現状で、市民の意見が十分に反映されていないと感じる部分があるからこそ、市役所改革という発想になるのだと思います。
 大阪都構想では、この原因は全て大阪市の規模が大きいためで、30万人規模にすれば全て解決するように語ります。でも、本当でしょうか?
 わたしは、市民の選んだ市議会を持ちながら、市政に市民の意見が十分に反映していない感じる部分があるなら、それは、議員の選出方法であったり、議会と市政の関係であったり、議会と予算の関係などといった制度全体の構造の中にも、大きく原因を持っているように思うのです。
 ですから、市議会と別に、区議会を置いたとしても、制度全体の構造は変わりませんから、結局、「区民の意見が反映されない」と感じるひとが出てくるだけのように思います。

 では、どうすればいいのでしょうか?
 区役所には、元から区民からの生の意見が集まっています。そこに、権限と財源が加わるなら、後は、区民のために多少の無理をしても頑張ろうとするインセンティブを設けることが、一番大切なのだと思います。
 わたしは、議会の予算審議のような事前の審査ではなく、毎年の区政を行った結果に対して、区民から直接評価を受けるような方法が良いのではと思います。そして、評価の高い区役所と評価の低い区役所では、職員の処遇を変えることを考えてみてはと思うのです。
 区民からの区政への評価は、第三者の調査といった方法もあるでしょうし、投票(又はアンケートの郵送)などで評価を貰う方法もあるでしょう。バウチャーを活用する方法もあるかもしれません。市民へお願いをする部分もでるかもしれませんが、色々な方法が考えられるはずです。

 区民が区政へ意見反映する方法は、選挙など既存の手段だけに固執するのではなく、もっと多様な考え方を検討する方がいいように思っています。
 そして、政令指定都市の規模のメリットを十分に活用しながら、このような方法で、区役所が区民からの要望に、柔軟に対応できるような方法が見つかれば、一番良いバランスの「区役所への分権」になるのだと思います。

 なお、余談ですが、「区民のために多少の無理をしても頑張ろうとするインセンティブ」のための方法を考えていた時、民間会社のように覆面調査員を派遣するのって、市民と接する窓口では、表層的かもしれませんが、効果あるのかなと思いました。
 上での議論のようなことと比べれば、導入にそれ程難しい点があるとも思わないので、やればいいのに、と思うのですが。(既に導入済みだったら、ゴメンナサイ。)


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posted by 結 at 03:07| Comment(2) | 行政組織 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも、勉強させて頂き感謝しております。
本日、橋下知事が分市案を撤回したと新聞で報道がありました。
知事としての発言は、非常に重い責任があるので、撤回するのであれば、記者会見をし、平松市長に謝罪すべきだと考えています。
また、市民に知事の発言をどんどん流し、正しいかのように報道しているマスコミにも何らかの責任があると思うのですが、いかがお考えですか?
港区でこれまで応援していた二人が、維新の会に所属したので、きちんと説明を受けて、市民を惑わしているだけならば、私も頑張るつもりです。
Posted by 港区で府議会を目指しています at 2010年10月10日 12:15
 分市案撤回を教えていただき、ありがとうございます。うちの新聞には書いてなかったので、助かりました。
 一般に、知事の立場にある人が、府下の市町村に分市を要求し、問題を指摘されて撤回となったら、普通、政治責任を取って辞任だと思います。そもそも、市町村の合併・分割って、他の自治体の首長が、当該自治体の意思に反して、干渉していいはずがないのですから。
 橋下知事は、その位、重大なことをしているのだと思っています。

 でも、マスコミは正論を語る存在とは、思わない方がいいでしょう。権力と民意が付いていってると思ったら、批判などするはずはないのです。

 ただ、大阪都構想について、その内容を公表させたり、ある程度、第三者として検証するためには、マスコミを当てにするしかありません。
 今は、どちらが正しいかという話以前のこととして、「みんながきちんと知って、判断をするべきだ。」という正論を、ひたすら唱えるしかないのかなと思っています。

 なお、当ブログでは、コメントはコテハンを推奨しています。ご協力願えれば、幸いです。
Posted by 結 at 2010年10月11日 01:26
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