2010年09月19日

二重行政よりも二重負担(その2)

 前回、大阪市が政令指定都市になった時の予算・事業のモデルを次のように挙げました。

大阪府 支出 240 うち大阪市内向け  70 →広域業務  (10減った分は、6を市外へ追加 4はロス)
    収入 240 うち大阪市内より 160

大阪市 支出 100  身近な行政 90 広域業務 10
    収入 100

 そして、二重行政の無駄である「4」のロスは、大阪市民が、大阪府へ広域行政のための府税を払った上に、身近な行政への支出を削る形で、大阪市へも広域行政のためのコストを支払っていること(広域行政経費の二重負担)が源泉となっているとしました。

 今回は、大阪市が政令指定都市となり、市民に広域行政経費の一部を二重負担させていることに、合理性はあるかです。

 大阪市がわざわざ、「なぜ、市民に広域行政経費を二重負担させているのか。」なんて説明しないので、推測をしてみると、大阪市が広域行政経費の二重負担を正当化するとすれば、次のように説明するのではないかと思っています。
 「大阪市が、政令指定都市として、広域業務の一部を担当することで「10」(または、12〜15といった、10以上の経費)の経費を負担することになりますが、保健所などの施設を区ごとに置いたり(大阪府の保健所は、独自設置の4市を除いて14ヶ所)、市民からの要望の高いサービスの積極的な取り込みや、都市計画などでも市民のニーズにきめ細やかに対応したりして、市民に追加経費を負担していただく以上の効果を挙げていると思っています。」

 もし、この説明のように、大阪府が提供する「10」の行政サービスの替わりに、大阪市が「10」(または12〜15)の広域行政経費を追加支出をするのだとしても、その行政サービスが市民にとてもフィットしていて、「20」以上の効果・満足を提供しているのならば、十分に合理的だといえます。
 この場合、大阪市民は、大阪府が提供するはずだった「10」の行政サービスの経費がどこに消えるかは関知しないので、全部がロスになったとしても、構わないことになります。(勿論、ロスは、少ないほうがいいに決まってますが。)

 逆に、大阪市が提供する広域の行政サービスが「20」以上の効果・満足を提供していないのならば、大阪市が、政令指定都市となって広域行政経費を追加支出のは不合理であり、一般市になって、大阪府から広域行政サービスを全部、受けた方がよいことになります。
 この場合、大阪府が提供するはずだった「10」の行政サービス経費が、全くロスなく他の行政サービスに転用できて、二重行政の無駄がゼロであったとしても、ダメってことになります。

 つまり、二重行政の無駄を負担している大阪市民にとって、二重行政の無駄そのものはどうでもよくて、「大阪府から提供されるはずだった広域行政サービス」と「大阪市から提供されている広域行政サービス」の差を比較して、大阪市が広域行政経費を追加で負担しているのが妥当かを、判断することが肝心なのです。

 二重行政の無駄以前の話として、大阪府が提供する広域行政サービスで十分だから、大阪市は政令指定都市であることを止めて、今まで大阪市が広域行政に費やしてきた経費を、身近の行政サービスの充実に振り向けて欲しいという意見は、十分にありだと思います。
 けれどもそれは、「大阪府から提供されるはずだった広域行政サービス」と「大阪市から提供されている広域行政サービス」と、大阪市が負担している広域行政経費の額を、ちゃんと見定めてからだと思います。

 次回は、大阪都構想が実現した場合、二重行政の無駄や大阪市民の広域行政経費の二重負担が、どのようになるかを見ていきます。

・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、目次から、他の記事もどうぞ。
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posted by 結 at 04:34| Comment(4) | 広域行政 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 二重行政について、結さんはじめ、多くの方があれこれと様々な考察を重ねているのに対し、当の知事本人や大阪維新の会の方々が何処まで深く考えているのか、非常に怪しいものを感じています。というより、考えれば考えるほど、言ってることのアラがでてきてしまうので、あえて深く考えることはせず、多くの有権者にとって聞き心地のいい「無駄をなくす」というフレーズを繰り返すことだけに思考をとめているとしか思えません。
 知事の過去の発言の中にも、行政実務のことは僕らにわかるわけがない。そんな細かなことは、選挙で大きな方向性が決まってから役人たちの考えることだ。政治家は大きな方向性だけを示したらいい。というような趣旨のものがあったと思います。有権者は――少なくとも大阪市民は、このことの曖昧さやいい加減さをよく見抜いておくことが大事だと思います。いざ、選挙が終わって、具体的に大阪都への移行業務が始まってから、大混乱となり、生活レベルが下がって、あれ、こんなことになるなんて知らんかった、ではもう取り返しがつきません。
 維新の会が発足して初期の頃、どなたか忘れましたが府会議員の方が二重行政を解消して3千億円(数字もうろ覚えです。確か数千億という言い方ではなくはっきりと○千億と言ってたかと思います)の財源を生み出し云々と、(当然ながら)明確な根拠もなしに語ってるのをおそらく新聞記事で見たように記憶していますが、ほんと、イメージだけで民衆を煽り、不確かな数字で煽動しようとしていることは、市民を騙しているとしか思えません。
 長々と書いてしまってますが、何が言いたいかと言うと、おそらく知事の考えてることは、淀川左岸線やなにわ筋線、関空リニア等の大きな公共事業の決定権限を一元化したいだけのように思います。阪神高速道路や鉄道の新線建設などには、たとえそれが市域外にまたがる路線であっても、大阪市が大阪府と同額の出資や補助を行っていて、当然金も出すなら口も出す。大阪市民にとって本当にメリットになると同時に大阪都市圏や関西全体にとってメリットになるかどうかの判断をしてきました。現在の財政状況のなかで数千億円規模の公共投資に慎重にならざるを得ないのは当然のことです。ところが知事は、自分がGOと言っても市長が反対するから事業ができない。事業を進めるには決定権者を一人にするしかない。と言う発想が根本になっていて、都構想は権限や財源を大阪市・堺市から奪い取るための議論だと思っていました。辻市議の資料にもあるように、確実に大きな財源が府(=都)のものになりますから。
 ところが、最近の政令市返上・市分割論の登場はそういった常識ある人々の考察を混乱させているのですが、単に市を分割するだけなら、財源は市に残ったままで、今まで少なくとも府と同額のお金を出していた大阪市からのお金も、政令市でなくなることから出なくなります。知事の頭の中で、合理的な思考が働いているとは到底思えません。権限さえあればあとは何とかなる。役人がどうにかいい案を取り繕うだろうぐらいのことしか考えてない可能性が高いのではないかと思わざるをえません。
 ほんとにこんな人に大阪の未来を託して大丈夫かと、有権者には冷静に判断してもらいたいと切に願っています。ましてや、少なくとも知事よりは知識も経験も多く持っておられるはずの(中には少ない方もおられるかもですが)府会議員、市会議員の方々には、知事が言ってるからではなく、自分の言葉で有権者に正しく説明をする責任があると思います。そこで説明できないのなら、知事に対してそこは間違っていると正すぐらいの気迫と根性を持ってほしいものです。
 特に市会議員の方々には、自らの存在そのものを否定している議論に自らが賛成している自己矛盾をどう説明するのか。単なる選挙目当てで維新の会に行ったのでないのならば、大阪の未来のために自分たち自らが捨石となります。とでも言うつもりですか。と、問いたいキモチでいっぱいです。
 長文、駄文失礼しました。
Posted by bafuken at 2010年09月20日 04:13
 わたしは、橋下知事に対して、少し違った印象を持っています。
 橋下知事は、大きな方針を出すに当たっては、細部をかなり雑なままされている印象はありますが、大きな方針のための積み上げ(特に、知事として、直接関与する部分)については、かなり緻密な積み上げをさせていると思っています。

 今後の記事にも書きますが、大阪市分割案については、交付税額が関係しているような話を聞きました。交付税額の試算をするということは、都区部のエリアと区分け、都区と都庁の業務配分と財源配分を決め、それに基づいて、基準財政需要の試算を行ったということです。大阪市分割案がB案であるとすると、大阪都制で一度試算を行い、その結果に思わしくない点があったので、大阪市分割案を作ったことになります。

 もう、大阪都構想の案は、かなり考えられているように思います。
 橋下知事にとって、交渉相手たる、大阪府民、市民が、そういった具体案を提示する必要がない相手だと見られていることに、かなり忸怩たる思いがあります。
Posted by 結 at 2010年09月21日 02:39
 私が言いたいのは、知事が都構想から市分割論に転じた段階で、都構想では大阪市から巻き上げる財源が、市分活論ではなくなる(都=府に入ってこなくなる)ことについて、言及していない点です。知事のやりたい大型公共投資の財源確保のために大阪市の財源を都に巻き上げるつもりだったはずなのですが、それがなくてもいいという判断はどのようにされているのかが不可解です。
 おそらく、市分割論に転じた原因は、都になると、現在、各市が受けている交付税が、都でまとめて受け取ることになることから、各特別区へは都が財政調整もしながら交付税を配分することになり、2区の市議補欠選挙で散々言っていた区の財政的主体性を高める云々の議論と矛盾することに気づいたからではないかと思います。 また、柳本市議のブログでも解説されていますが、交付税措置って、そんなに単純に計算どおり国からもらえるものではないと思います。国自体も税収が落ち込んでる状態で、市を分割したから分割した小さい規模の市では財源不足が多くなるから多くください。はいそうですか、どうぞ。みたいなことにはまずならないと思うのです。そもそも国がきめる基準財政需要額の範囲内でしか、財源確保はできませんし、今まで市が独自にやってきた住民サービスは全国一律の基準以上のものは切り捨てられるしかないことにもなります。さらに、交付税措置の足りない部分は臨時財政対策債という起債(=借金)により賄うことになりますが、当然266万人規模から30万人規模に分割された財政力の小さい市は市場信用度も落ちるので、資金調達のコストも多くかかることになります。
 市を分割したら、財政力に格差が生じるとの批判に、知事は交付税というものがあるのを知らないのか。見たいな反論をしていたかと思いますが、そんなに単純に簡単に問題が解消されるとは到底思えません。
 結さんのおっしゃるような緻密な計算をしているようにはとても思えません。もしそのようなことをしようとしたら、大阪市と大阪府の財政担当者が頭を着き合わせて、本当にお互いの手の内を見せ合いながら共同でシミュレーションしないと無理だと思います。
Posted by bafuken at 2010年09月22日 00:32
bafukenさんのおっしゃることは、大筋分かります。大体、このブログでも、そういうことを書いていますので。
ただ、橋下知事がわたしたちが想定していること(特に、府に関する部分)を把握せずに、発言などをされているという理解には、立ちません。ここで議論されているような多くのことは、知った上で、知らん振りを決め込んでいる=与えたい情報だけを提供していると考えています。

 大阪市分割案については、都庁が都区へ基準財政需要に基づき、予算の配分をしようとした時、東京都のように潤沢な予算のないため破綻をした結果ではないかと、かなり乱暴な推測をおきながらですが、仮説を立てています。
 根拠のない推測を重ねた邪推の類になりますが、次回の記事で書かせていただこうと思います。
Posted by 結 at 2010年09月22日 01:04