2010年08月31日

大阪都構想と大阪市分割案の違い(その2)

 前回は、タイトルとずれて、大阪都構想と大阪市分割案はよく似たものという話だったので、今回こそ、大阪都構想と大阪市分割案で、どのような違いが出てくるかです。

 まず、大阪府(=都庁)側で考えてみます。
○都税制度を取れないこと
 前回の話の通り、大阪都した場合の最大の特徴は、都区域(=大阪市など)の市税や市のための地方交付税を、都庁が受け取り、その一部を都区へ配分することです。これにより、財源を握ってるのですから、都区へ強い統制力を働かせることができますし、配分しなかった分を新たな大阪府(=都庁)の財源とすることができる訳です。
 大阪市分割案では、こういったことは、(現行法がそうであるように)できないです。

○都税制度が取れないことで、大阪府下の広域行政支出が減少する
 現状の大阪府下の広域行政支出は(堺市を置いておくと)、「大阪府の広域行政支出」+「大阪市の広域行政支出」です。
 大阪都構想では、「大阪府の広域行政支出」+「大阪市の広域行政支出」+「都区の行政をスリムにした分」になると予想します。金額も増えて、大阪府が一元的に支出するというメリットもあります。
 これに対して、大阪市分割案では、大阪市分割後の新市の収入を、(大阪府の)広域行政支出に充てることはできませんから、「大阪府の広域行政支出」のみとなります。一部の方が主張されるように、大阪市の広域行政支出の大半が、大阪府との二重行政で無駄になっているのなら、これでも、全然、問題ないことになります。
 ただ、わたしが以前の記事で主張しているように、大阪市の広域行政支出で、無駄になっている分が少ないのなら、大阪府は、大阪市の広域行政支出分も、大阪府の中でやり繰りして、捻出する必要があります。
 でも、大阪府が支出のやり繰りが必要になったとしては、わたしは当然と考えます。大阪府が支出のやり繰りが必要になる分というのは、大阪市内から徴収してきた府民税などの府税で大阪市域へ支出すべき分を、今までは大阪市が負担していたので、他の使途へ流用してきただけだからです。

○大阪市の広域行政業務に関する資産以外の資産は、大阪府のものにできないこと
 大阪都構想では、移行時、一度、自治体としての大阪府と大阪市を合併し、その中で、基礎自治体業務をする部分のみを、都区として、放り出すという手順になると思われます。そうすると、大阪市の資産や事業は、移譲の手続きなどなしに、大半を大阪府のものにできる訳です。
 大阪市分割案では、大阪市が政令指定都市でなくなったことで、大阪市の政令指定都市権限に基づく、事業や資産は大阪府へ移譲されますが、その範囲や対象は法律で明確に決められます。(堺市のように、新規に政令指定都市になるケースは、近年にも多々あるので、どのような業務、資産が移譲されるかは、運用としても、明確なのです。)
 そのため、政令指定都市権限に基づく訳ではない、地下鉄事業や市立大学、図書館、病院などは、基本的に大阪府へ移譲されません。(港湾事業会計で管理してるとかでなければ)南港、北港の埋立地も大阪府へ移譲されません。
 こういった政令指定都市権限に基づかないが、ぜひ大阪府へ欲しい事業、資産は、何とかして移譲する手続きを取ろうとすると思われますが、そのことを反対に思う市民から、「市へ損害をかけた。」として、その時の市長が損害賠償請求を受ける可能性すらあります。かなり、慎重にすることになると思われます。

 また、時々テレビなどを見ていると、図書館や大学など広域行政権限に基づかない事業について、二重行政を指摘している場面を見かけます。こういった事業が「二重行政」といえるのかは別にして、広域行政権限に基づかない事業は、基本的に運営は一元化されませんから、「二重行政」は解消されません。(そもそも、二重行政でなければ、解消もなにもありませんが。)

○業務に切り分けが法律通りとなる
 大阪都構想では、都庁と都区の業務の切り分けは、かなり自由に設計できるので、(都区の意向など関係なしに)保健所業務や生活保護業務を、今までどおり、都区の業務にしてしまうようなことも可能でした。
 大阪市分割案では、基本は法律通りとなります。大阪府は今、府の業務の一部を府下市町村へ移行したりしてますので、分割後の新市と合意ができる業務については、法律と変える可能性もありますが、分割後の新市と合意できない業務を押し付けるようなことは、できなくなります。

○大阪市の公債発行残高を、どのようにするか、より問題となる
 大阪都構想であれば、大阪市の公債発行残高を、都庁の整理会計で管理し、都税化した固定資産税などから返還していくようなごまかしもできました。
 でも、大阪市分割案では、分割後の新市が背負うしかありません。一般会計で2兆5千億円。特別会計も併せると、5兆円。30万人規模の市から見ると、新市の8市集まっても相当なものですから、これだけで財政破綻しても不思議ではありません。8市でうまく協調して返していくことにしても、金融機関への信用力低下で、借り入れ金利を上げなければならなくなると、財政再建に支障を来たす可能性もあります。

 まだまだあるかもしれませんが、ざっと思いついたのは、こんなのです。

 次に、大阪市民の側で考えてみます。
 細かく見るといろいろあるかもしれませんが、大きなポイントとしては、やっぱり都税制度が採られないことです。市民からみれば、都庁と都区も、大阪府と(分割後の)市役所も、名前が違うだけで、内容はほとんど違わないからです。

 大阪都構想では、都区の予算は、都庁の配分に大きく依存しますから、都庁に間で抜かれて、少なくなってるとは思いますが、都区間での格差はあまり出ないようにされているはずです。
 大阪市分割案では、今の大阪市の税収が、そのまま新市の税収となりますが、8市間での税収は、それなりに格差はでるはずです。(ただし、統合する区の組み合わせや、法人市民税の税収が、市を分割して計算すると、今ほど、北区、中央区に集中しないことなどから、あまり極端な想定はしなくていいかもしれません。地方交付税のような、地域の格差を大きくしないための制度もあります。)
 つまり、都に従属して、小さくバランスを取るか、市として独立して、それなりの格差を受け入れるかです。

 大阪市分割案では、今まで広域行政に支出してきた分も、新市の一般の業務(基礎自治体業務)に振り分けられるので、新市で身近な行政に充てられる予算の総額は増えます。ただし、大阪都構想にせよ、大阪市分割案にせよ、今まで大阪市役所で行ってきた業務を8つの市役所で行うことになるうえ、規模が小さくなってコストも上がるので、今までどおりの行政サービスを行おうとすると、コスト的には高くなります。多分、大阪市分割案で予算の総額が増えても、行政サービスは、今までよりカットしなければならないと思います。

 身近な行政サービスを、大阪市の中で、地域による格差とか起こさず、今まで通りの行政サービスを確保しようとするなら、今の大阪市のままが一番という結論は、つまらない結論なので、横に置いておきます。
posted by 結 at 02:57| Comment(2) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大阪市を分割して出来た8〜9の市の内、少なくとも一つ以上が設立当初から財政再建団体(夕張市状態)になる可能性もありますね。
Posted by ポン at 2010年09月02日 11:13
ポンさん、コメントありがとうございます。

2.5兆円でもさすがに巨大で、税収の分割のされ方によっては、過半が財政再建団体落ちになっても不思議とは思いません。
ただ、そんな分市を総務省が許可するとは思えないので、市財産のバーゲンセールをやって、借金、減らすのでしょう、きっと。市民のためになるかとかではなくて。
Posted by 結 at 2010年09月03日 02:50
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