2010年07月24日

水道事業統合の結末を悲しいと思うわけ(補足)

!!!!注意!!!!(2013年5月25日)
以下の記事は、2008年〜2010年に掛けて行われた大阪府・市の水道統合協議で示された、統合によって大幅なコスト削減が実現できるという試算に基づいて、議論を行っています。
しかし、橋下市長が大阪市長になった後に、大阪市と大阪広域水道企業団との間で始められた統合協議(2012年3月〜)の中で、この記事で府案と呼ばれる方式(大阪市の柴島浄水場を全廃し、大阪市域で不足する水需要に対して、企業団の浄水場から配水を行う案)では、大阪市域のコスト増が現企業団側の収入増を上回り、大阪府全体で捉えても百億円単位のコスト増になると試算されています。
つまり、ちゃんと計算してみると、府市の水道を統合しても解消できる無駄は見つけられなかったということです。
詳細は、当ブログの「水道事業統合の統合効果が見当たらない」(2012年10月10日)をご参照ください。

************* 以下、記事本文 *************
 前回の記事に、珍しくコメントをいただきました。
 わたし自身も、少し書ききれてないかなぁと思う部分もありましたので、ご返事と併せて、前回の記事の補足です。

○府側の統合交渉の必要事項を「5000億円以上を予定する設備更新費用の抑制」と考えた理由

 統合事業を考えた場合、そこに期待することって様々ある訳です。でも、その中にも優先順位はあって、「最優先で絶対に外せないこととして、何を置いていたか。」というのを、必要事項としました。
 それで、府側を「5000億円以上を予定する設備更新費用の抑制」と考えたのは

・府の水道設備の更新費用が、水道事業統合の話が始まる前から、テレビのニュースで取り上げられる位に、有名で、重大とされていたこと。

・統合交渉の開始後、2009年1月時点には、橋下知事が「市案を軸にする」という思い切った方針を出さなければ、協議は行き詰まっていて、交渉破綻、現状のままといった状況でした。
この状況で、橋下知事が市案を丸呑みするという決定をしたのは、府水道部がどうであれ、現状のままという結論になることは許容しないという意思表明と理解しました。
2010年1月に、統合交渉を終結し、42市町が府の水道事業を継承する企業団結成となる訳ですが、当然、この結論が出る前に、企業団結成を府と市町が調整する中で、橋下知事はこの結論の了解を出しているはずです。
しかし、この結論では、経営の効率化として捉えると現状と変わりません。再度、仕切りなおして統合交渉を進めようとするならば、交渉が進展したのは、橋下知事の大胆な決定のおかげと考えれば、元のままの府水道部にしておいた方が、まだマシです。
そう考えると、企業団結成は、府側にとって、最低限の条件は満たすもので、一応の決着としていいものだったということになります。
府水道部とこの企業団で何が違うかを考えると、大阪府が直接関与するものではなくなるということです。つまり、水道事業会計を、府から切り離すことで、最低限の条件は満たされたということから、設備更新費用を当初計画通りに府の会計で背負うことは、ぜひとも避けたかったのだと考えました。
・最近のニュースの中で、工業用水事業の企業団への引き取りについて、一部の市町で経営上の懸念が示されていましたが、府の意向によって、企業団へ統合されることになったそうです。矛盾はしていないなと思っています。


○合意された統合案を受水市町に納得させるのは、府の役割だと考えた理由

 今回の統合交渉は、大阪市民をお客とする大阪市と、受水市町をお客とする大阪府が、それぞれの浄水事業を統合し、合理化を図ろうとするものです。そして、合意案を大阪府側で見ると、府の水道事業を、府の事業のまま、指定管理者制度を用いて「大阪市という事業者」に対して、運用作業の委託を行うと決定したものです。
 「事業統合」という言葉ばかりが出ているので分かりにくくなっていますが、自前で運営していた保育園を民間業者へ運営を委託することにしたというのと、同様のことです。

 大阪府が事業を委託すると決定したことを、大阪府が自分のお客である受水市町へ説明し、納得させるのは、当然のことだと考えます。
 受水市町とのやり取りの場となった、府営水道協議会は、大阪府と受水市町の調整の場です。部外者である大阪市が、何故そのような場に、しゃしゃり出て、大阪府の関係先の説得にあったたのか、そのことが、大変疑問です。


○大阪市に信用がないため、交渉が破綻したのか

「大阪市に信用がないから」というのは、破綻確定後の記者会見で、橋下知事がいった言葉だと記憶しています。
 わたしは、「言葉どおり」のように、大阪市に信用がないとは考えません。ただし、今まで府営水道を運営していたのは、大阪府で大阪市ではないこと。大阪市は、他の市町と同列の市であること。で、大阪府より信用がないというのは、あると考えます。

 ただ、どちらの意味で、どれ程に信用がないのだとしても、それは合意前から分かっていることです。だから、どれ程信用がないのだとしても、大阪府はそのことを前提にして、それでも事業が大丈夫だという、契約上の取り決めや検査体制などの仕掛けを準備して、事業を委託しなければなりません。委託をしても、府の事業としての責任はあるのですから。この辺りは、前記の保育園の民間委託と同じことです。
 また、そのためにこそ、1月の市案を、大阪市を指定管理者にする方式に変更し、水の価格や事業計画の最終決定は、大阪府議会がすることにしたはずです。
 合意後、数ヶ月もたった2009年7月頃、橋下知事から「市の案は府側からしたら突っ込みどころ満載」といった発言があったようですが、合意前に自分の関係先を納得させられるだけの整理もせずに、案の決定をしたのなら、その責任は、どちらにあるのでしょうか?

 ちなみに、受水市町が反対の意味を込めた質問書を見ましたが、わたしには、「現状と変わることは、不安だ。」「今まで通りに、受水市町の意見が反映される保証が必要。」「府が既に10円10銭の値下げを発表しているのだから、それ以上の値下げを表明するのでなければ、統合にメリットはない。」といったようなことだと、理解しました。
 とりわけ、受水市町の説得を行っている時に、その唯一、最大のアピールポイントの料金値下げを、統合と関係なく行うと発表した、大阪府の責任を重いと考えます。


○水道事業統合は、全体コストの削減が確実に見込まれるのに、なぜ統合交渉がうまくいかないと考えるか

 マスコミ的には、組織の主導権争い的な囃し方をしますが、わたしは、次の点に着目します。

 まず、一番シンプルな事業統合の形態としては、当初、府が主張していた(また、現在、水道事業団が求める)府水道と市水道を、事業統合して、ひとつの企業団として運営することです。
 これに対して、大阪市側の問題は、主に次の二つと考えます。

○現在、大阪市は、大阪市内について、100%の価格決定権を持っているのに、共同で運営する企業団を通すことになると、価格決定権が低下する。
○府の水1トンの卸売り価格は、88円10銭(うち原価は82円)、市の水1トンの原価は64円と言われています。これを統合して平準化すると、大阪市内の水価格は、値上げになると見込まれます。

 大阪市は、この2点を受け入れることはできません。これは、コンセッション方式に反対した大阪府の受水市町と同じことを主張しているだけです。(統合に反対した受水市町は、値上げまで求められた訳ではありません。)

 統合でメリットが出るはずなのに、大阪市民にはデメリットしか生まれない。これで、統合ができるはずがありません。
 この矛盾について解決策が見つからないことが、問題と考えます。大阪市案、コンセッション案は、一応、これをクリアするための方策でしたが、トリッキー過ぎて破綻しました。

 ここまでは、当たり前のことの確認ですが、続きがあります。
 実は、水道事業団は、何としても、この問題を(強引にではなく)解決する方策を見つけなければならないと予想しています。

 大阪府及び水道事業団は、府域一水道を目指していますが、これは、大阪市の水道が統合されるだけでは実現しません。大阪府・大阪市の水道事業統合の報道の中には、あまり出てきませんが、大阪市以外にも、自己水源を持っている大阪府下の市町は、いくらもあります。自己水源が100%なのが、大阪市だけというだけです。
 代表的なのは、高い府の水を買っているはずなのに、府下で一番水道料金が安い吹田市で、約50%が自己水源なのだそうです。

 府域一水道を目指していくと、こういった自己水源も水道事業団に統合していく必要があります。特に、各戸への給水部分の統合を図ろうとすると、避けようがないと思われます。
 そうすると、こういった自己水源の統合については、各市町、大阪市と同じ問題となる訳です。

 大義を振りかざして、誰かに無理にデメリットを押し付けようとするものでない、よい解決策が見つかることを願います。
posted by 結 at 04:35| Comment(0) | 広域行政 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。