2010年06月22日

大阪都構想の交通事業に感じる危うさ

 以前の記事で、わたしは、大阪都構想も、大阪府への広域行政権限の移譲も賛同しないが、もし、大阪市民が大阪府へ広域行政権限を移譲しようとするならば、交通事業などの戦略ツールもセットの必要がある(ただし、有償で。)と書きました。
 この考え方は変わっていませんが、ここでは、大阪都構想と関連して語られる交通事業に感じる危うさについて整理したいため、やや反対に軸足を置いた記事となります。ご理解ください。

 大阪都構想に関連して、大阪市から「都」へ移譲させたいとして、よく名前が挙がるのが、地下鉄事業です。民営化させるという話も出されていますが、ここまでの話の経過と合わせて考えるなら、望んだ所へ地下鉄の新線や延伸を行わせられないといけないので、完全民営化ということではなく、都が過半数(あるいは、十分要求を飲ませられる程度)の株式を保有する、第三セクター会社などの形態を想定する方が近いのでしょう。

 わたしが気になったのは、橋下知事がこのことを語る時、必ず、「地下鉄」と言い、決して「大阪市交通局」とは言わないことです。つまり、市バス事業については、全く発言していないということです。

 大阪府が現在関係してる交通事業として、わたしの知っているのは、泉北高速鉄道と北大阪急行電鉄、それから大阪モノレールです。大阪モノレールの大阪空港ー門真間を除けば、開発意図は、極めて明確です。
 泉北高速鉄道は、泉北ニュータウンの大阪中心部へのアクセス手段を確保するため。北大阪急行電鉄は、千里ニュータウンと大阪万博会場の大阪中心部とのアクセス手段を確保するため。大阪モノレールの彩都線は、彩都と既存の公共交通機関へのアクセス手段を確保するためです。
 つまり、新規開発地域へ、都市計画的観点から、鉄道を確保するもので、開発後、各線を統合的に運用しようとしているようには、見えません。

 橋下知事が、移譲させた大阪市の地下鉄事業に求めるものも、同じようなものだと思います。
 大阪湾岸地域や、堺湾岸地域など、開発地域と位置づけた地域へ、鉄道を引かせることのできる、便利な鉄道会社が欲しいといったような。

 けれども、大阪市の交通事業は、かなり性格の異なるものです。
 地下鉄も、現在は規模が大きくなりましたが、その原点は、市電であり、市バスの一部路線を置き換えていったものです。そして、地下鉄と市バスで、大阪市の市域全体に公共交通網を張り巡らせ、交通弱者が生まれないようにしているのです。

 大阪市に代わって、(東京都のように)大阪都が、都区域の交通事業を担うというのであれば、それは、ひとつの選択です。大阪市域のバス網などは、一部薄くなるかもしれませんが、大阪都区域全体の交通事業を整備するためには、必要なのでしょう。
 でも、そのように交通事業を捉えるなら、地下鉄事業だけでは、お金も時間も掛かりすぎます。機動性の高い、バス事業は、必ず必要になるものです。
 それなのに、意図的に、地下鉄事業の移譲のみを語り、市バス事業について触れていないのは、大阪市に代わって、都区域の交通事業を担うという考え方を持っていないからだと、思ってしまいます。

 大阪府は、便利使いできる鉄道会社を確保し、大阪市の交通事業からは、地下鉄事業のみが、別会社化され、そんな大阪都の下に置かれる。
 赤字に喘ぐ市バス事業は、主体である大阪市がなくなり、8都区の共同事業化されて運行される。(8都区共同事業化の問題は、また別の話題とします。)
 大阪都区域として捉えても、大阪市域内に限っても、とても、交通政策のレベルが上がるとは思えません。

 もし、こういうことが指摘され、問題になったとしたら、橋下知事は、「それなら、市バス事業も都が引き受けるようにすれば、いいんでしょう。」という姿を想像してしまいます。
 そして、「そういう問題じゃないんだけどなぁ。」と、更に悲しい気持ちになってしまうのです。
posted by 結 at 02:57| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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