2010年04月29日

大阪府・市の二重行政を解消しても、量的効果は少ないと思う訳(その2)

 水道事業のように、担当エリアをきっちり分けている場合、二重行政解消しても、あんまり変わらないかもというのが、前回でした。
 では、消費生活センターみたいなところで、大阪府が府下全域(大阪市を含む。)を相談の管轄をし、大阪市が大阪市内のみを管轄するというような場合は、どうでしょう。

 大阪市のセンターの事業は、完全に重複しているので、二重行政解消のお手本になりそうです。
 ただ、気を付けなければいけないのは、府下で相談にくる人の総数は変わらないということです。府が1日100件、市が1日50件の相談を受けていたとすれば、府のセンター1本にすれば、1日150件の相談を処理する必要があります。相談員1人の処理できる件数は変わりませんから、結局、大阪市のセンターの人員をそのまま、府のセンターへ吸収する必要ができてきます。
 削減効果としては、センター長が1名減(高らかに誇りましょう。)、総務と広報が少々(事務は減っても、アルバイトさんが1名減るだけかもしれません。)、他は市と府を合計しただけなんていうのは、結構ありそうなことです。しかも、府と市を合わせると、元の場所では入らないので、引越し経費が数千万円とか。

 「役所が、そんな忙しいところばかりじゃないだろ。市の業務を受け入れたからって、担当者の増員なんて必要ない部署の方が多いだろう。」といった意見も、聞かれそうですね。
 これは誤解です。どこの部署も、暇な時期、忙しい時期はあっても、仕事をこなすために、最低限必要な人数しかいない(ことになっている)のです。だから、市の業務分を受け入れるなど、事務量を増やす時には、人員の見直しをしなければならない(ことになっている)のです。
 だから・・・たぶん・・・「二重行政の解消!」っていっても、そんなに人員や予算の削減効果って出ないと思うのです。
 「人員と経験を統合し、今までより更に高度な業務の達成を図っていきます。」といったような、言うだけタダなお題目の効果は、色々出てくると思いますが。

 ちなみに、大阪府の消費生活センターのHPを見に行ったら、消費者からの相談、受け付けています。ただし、電話での相談の場合、各市の消費者相談窓口をご案内しますと書いてありました。
 二重行政の解消以前の話じゃないかと思うのは、わたしだけなんでしょうか。


(追記)
 大阪府議会の大都市制度検討協議会に大阪維新の会が提出した財源配分シュミレーションの資料の中に、大阪府・市の二重行政を考える上で、興味深い数字がありました。

 橋下知事は、大阪市が政令指定都市として府県に近い業務を担当していることを批判し、大阪市が担当する府県の業務の一部(特別区は中核市なみの権限を有するとして、政令指定都市より、少し業務範囲が小さくなるので、その差分の業務です。)を、大阪都に集約するとしています。

 この大阪都へ集約する業務の規模が、一般財源ベースで330億円の規模だと示されました。同資料によると、大阪市の予算全体は一般財源ベース(実際の予算額は、一般財源に国庫支出金などが加えられるため、ずっと大きくなります。大阪市の平成20年度の歳出額は、1兆5500億円です。)で8782億円ですから、二重行政解消が期待できる府市の広域行政の統合部分330億円は3.8%を占めるに過ぎません。

 大阪市の残りの事業96%(8452億円)は、8〜9の特別区に分割されます。
 大阪都へ統合される330億円のうち、何割のコスト減ができるのかはわかりませんが、8452億円の業務が8〜9の特別区に分割されることで、例え1割のコスト増になるだけでも、確実に吹っ飛ぶことが分かります。

 大阪都構想は、大阪市の担当する府県の業務の一部を大阪府の業務と統合し、残った業務を特別区に分割するものです。統合による効果だけが強調されますが、特別区に業務を分割することによるコスト増も確実に発生します。
 大阪都構想は、行政の効率化と語られる場面が多いようですが、わたしには、コスト増の方が遥かに大きいように思います。

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posted by 結 at 02:36| Comment(4) | 広域行政 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。

たしかにね、二重行政解消しても、あんまり変わらない部分もあるでしょうね。でも少なくともばらばらにやるよりは効率化が図れる可能性はありますよね。予算にしても、施設にしても無駄が減る可能性はあります。 二重行政解消しないとその可能性が減るということじゃないでしょうかね。税金のむだ使いは減らしてもらいたいですよね。

最近は企業の合併、買収が多いです。同じ考え方です。合併によって規模を拡大し、効率化を図り競争力をつける。関東地域との競争、アジアの都市との競争を考えると必要だと私は思います。

Posted by ふも at 2010年04月29日 10:38
真面目にご意見をいただき、ありがとうございます。わたしも、気持ちの中と投票で応援をしてきたひとりです。
ただ、大阪都構想は大阪市民にとっては、「期待」だけでは済まない、多大な影響を与えます。
それだけに、抽象的な目標を期待感のみでみるのではなく、具体的に示された施策の(自分にとっての)効果とコスト、それから、目的は妥当でも、方法の選択で、余計な負担を発声させていないかなど、細かく、きちんと見ていって考える必要があると思っています。

本当は、情報を沢山持っている、行政なりマスコミが一番負担の大きそうな大阪市民のことも考えながら、情報を整理していただけと嬉しいのですが、待っていても誰もしてくれそうにないので、個人のできる範囲だけでも考えたいと思っています。
最後は投票でどうするか、自分で決めなくちゃいけませんから。
Posted by 結 at 2010年04月30日 03:11
二重行政解消はコスト削減につながりますよ。
例えば、水道事業ですが、府と市が別々の施設を運営せず、一か所に集約出来れば、イロイロなモノが効率よく動かせると思います。
また、上記以外に、
府、市の需要予測が間違っていた場合、双方がパラで対応する事でのムダと言う悪夢が発生している事を御承知ですか?
府は設備を増強、市は廃却。

お互いに能力を融通し合えれると思うのですが、何気に最近まで行われていませんでした(橋下府知事&平松市長によって初めて)。
どうも、このやりとりが、橋下府知事の大阪都構想のトリガーにもなっているようです。

スケールメリットの向上。
これが大阪都構想の理由です。
事務所が2つあり、指揮系統が2つあるのって効率良くないですよ。
コスト効果で10〜20%あるのでは?っと言われています。
最も統合時の混乱にウンザリするでしょうね。
過去、府と市は競うように事業を拡大しましたから。
Posted by k9 at 2010年08月07日 07:55
 コメントありがとうございます。
 「二重行政解消」として、コスト削減の例は、いくらでも挙げられると思います。
 ただ、トータルで、どれだけの実際的な効果を挙げられるかは、掛け声ほどではないかもしれないと、考えています。内容は、記事の通りです。

 水道事業統合は、府市共に過剰供給力を抱え、府が設備更新時期を迎えているという、間違いなく統合効果を挙げられる、有力な例だと思います。
 けれども、統合交渉の結果は、合意された大阪市案では、3000億円の設備投資を削減し、府下市町への水卸売価格を88円を約10円値下げするものでしたが、受水市町からは、供給体制が変わるのは不安、今までの協議体制が保証されない、府が先行発表した10円10銭の値下げを上回る値下げが保証されないなら、統合効果があるとは認められないというものでした。
 府案では、単純な事業統合が示されました。ただ、給水原価に大きな差があるので、大阪市内の水道料金が値上がりする点に、解決策は示されませんでした。(解決すべき問題と、大阪市以外は、考えていないようです。)

 府市の広域業務統合による指揮系統の一本化やスケールメリット?は強調されますが、大阪市が8分割されるスケール上のデメリット、ゴミ処理など8都区共同で行う事業の指揮系統の分散化、大阪市域の基礎自治体が、財政自主権を失うことなどの問題は、あまり、検討され、認識されているようには思いません。

 変革は、Win-Winなものであって欲しいです。
 水道事業統合で、大きな投資削減効果を出せたが、大阪市民は、水道料金が大幅に値上げされた。そんな結末は、ゴメンです。
Posted by 結 at 2010年08月07日 16:34
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