2014年03月02日

大阪都構想財政シミュレーション(その2) 関係ない効果額を分けてみた

 前回の「大阪都構想財政シミュレーションを見てみた(その1)」で、大阪都構想財政シミュレーションがどのように組み立てられているかを見ました。
 そして、「年間170億円のコスト差がある7区案は選択できない」という結論のひとつについて、次の疑問を投げかけました。

〇歳出額1兆7千億円の大阪市を、府に統合する広域部分と5つの特別区に分割した後の運営経費を試算して、1%の運営経費の差が許容できないといった、凄い精度の議論に何故なっているのでしょうか?(実際の試算は、かなり荒っぽいです。)

〇大阪都構想は、歳出額1兆7千億円の大阪市のうち、広域事務4千億円を府に統合し、基礎自治体業務1兆3千億円部分を5つに分割するというものです。(元データ 元サイト
普通に考えると、広域事務の統合により削減される経費より、基礎自治体事務を分割するコスト増の方が大きく、全体としてコスト増になるはずです。
でも、この財政シミュレーションは、(5区案の場合で)基礎自治体事務1兆3千億円5つの特別区に分割して経費削減ができるとすることで成り立っています。そんな試算がなぜ成り立つのでしょうか?

 この疑問への答えは、財政シミュレーションの元となる大阪都構想パッケージ案が、いくつかの「無理がある」前提の上に成り立っていることと関係があると考えています。
 なので、大阪都構想パッケージ案を成り立たせている暗黙の前提の中でも、わたしの気になる次の3つを取り上げてみます。

【前提1】 大阪都構想の効果額として挙げたものが、本当に大阪都構想と関係あるかは、気にしないでね。

【前提2】 特別区の所要人員の試算は、特別区の実際の担当業務の運営に必要となる職員数を試算していないけど、そこは気にしないでね。

【前提3】 特別区担当業務を5つの特別区で実施することにした時のコスト試算で、歳出額の9割方(厳しく言うと99%)は試算対象から除外してるけど、そこは気にしないでね。

 今回は、【前提1】を見ていくことにします。

*******2015年2月2日更新*******
(以下の記事は、2015年7月発表の長期財政推計を元に数値などを新しくしました。2015年1月発表の財政シミュレーションを元にした元の記事は、記事末を参照ください)

【前提1】 大阪都構想の効果額として挙げたものが、本当に大阪都構想と関係あるかは、気にしないでね。

 大阪都構想の効果額に、地下鉄民営化など、大阪都構想と関係のない、大阪市の市政改革による効果額が含まれていることは、報道でもよく指摘されています。
 前回記事で見たとおり、大阪都構想財政シミュレーションは、今後出てくる効果額は(平成45年度まで待っても)年362億円であることを示していますが、この362億円にも、大阪都構想と関係のない効果額がいっぱい含まれています。
(なお、前回記事の財政シミュレーション(2015年1月発表)の今後出てくる効果額は年362億円でしたが、以下で説明に使用する長期財政推計(2015年7月発表)の今後出てくる効果額は年229億円になっています)

 まず、効果額内訳付きの長期財政推計です。(元データ 元サイト)(ただし、長期財政推計の年次データには特別区計が無いため、各特別区のデータを足しました。参照:各特別区の長期財政推計[粗い試算その1]の特別区合計
01長期推計_効果内訳付.jpg

 この効果額内訳を、大阪都構想に関係する項目と大阪都構想と無関係な項目に区分して、それぞれ表にしたのが、次のものです。

大阪都構想に関係する項目
02長期推計_都構想関係.jpg

大阪都構想と無関係な項目
03長期推計_無関係.jpg

 大阪都構想に関係する・しないの区分は、以前の記事「大阪都構想パッケージ案の効果額仕分け」の効果仕分表を基本にしています。
 大阪都構想に関係する・しないの区分の考え方は、次の通り。
〇「府市の組織を統合することによる効果額」(または、大阪市を特別区に再編することによる効果額)を大阪都構想と関係する効果額と捉えます。
〇より狭い解釈では「大阪都構想でなければ、(大阪府・大阪市のままでは)実現できない効果」というのがありますが、ここでは大阪都構想なしで実現できるものでも、府市の組織統合による効果額は、大阪都構想と関係する効果額と捉えます。
〇府市の組織統合によるものと、無関係なものがひとつの項目になっていて分けられないものは、原則、項目全体を大阪都構想と関係する効果額と捉えます。

(注意)大阪都構想の効果額は、反対されてる方の間では「1億円」と言われることが多いようです。「大阪都構想でなければ、(大阪府・大阪市のままでは)実現できない効果」として整理した額と思われますが、ここではそれよりも幅広く捉える方法を採ります。

 ただし、「職員体制の再編」(=人員削減)の効果額は、整理が難しいので、次の取扱いにしました。
〇広域側は、効果仕分表に沿って「管理部門を中心に重複部門を効率化」の170人14億円のみを、府市統合による効果額としました。
〇効果仕分表では、広域側で、他にAB項目関係の人件費削減を大阪都構想と関係する効果額と分類していますが、AB項目関係の人件費削減は、AB項目と重複するとして財政シミュレーションでは除外されてますので、これに習います。
〇特別区側について、効果仕訳表では大阪都構想と関係ないとしていますが、その部分の議論は次回の記事「大阪都構想財政シミュレーション(その3) 今のサービス維持に必要な職員数が知りたいのに」で整理するので、ここでは「大阪市を特別区に再編することによる効果額」として、大阪都構想と関係する効果額に分類します。


 表からは、次のようなことが読み取れます。
〇最終の平成45年度時点の再編コストを差し引いた効果額229億円の内訳は、大阪都構想関係80億円、無関係149億円。

 内訳は次の通り。
(大阪都構想関係)
04H45_都構想関係.jpg

(無関係)
05H45_無関係.jpg


〇大阪都構想と無関係な項目だけで財政シミュレーションを行っても、特別区(=大阪市)の収支不足解消は平成34年度。これは、大阪都構想を実施した場合と同じです。
また、効果額など無しでも平成35年度には収支不足は解消します。大阪都構想は、現在の大阪市の収支不足対策とは、全く関係ないことが分かります。
06特別区当初10年比較.jpg

〇大阪都構想と関係した効果額だけで見ると、効果額の柱は、特別区側での「職員体制の再編」による効果額67億円です。
04H45_都構想関係.jpg

 都構想関係効果額80億円(うち特別区分63億円)(H45)に対して、特別区の職員体制再編の効果額67億円ですから、これが無くなると、大阪都構想関係効果額は激減します。

 でも、特別区側での「職員体制の再編」による効果額って、「大阪市が一体で行っていた事務を、5つの特別区で分割して実施すると所要人員が減る」というヘンな試算が成立しないと、丸ごとコケます。この辺の議論は、次回記事「大阪都構想財政シミュレーション(その3) 今のサービス維持に必要な職員数が知りたいのに」で行います。


〇広域事務の統合効果が微小過ぎる。
 大阪都構想って「歳出額1兆7千億円の大阪市のうち、広域事務4千億円を府に統合し、基礎自治体業務1兆3千億円部分を5つに分割する」もの(元データ 元サイト)で、統合効果が生み出されるのは「広域事務4千億円を府に統合」の部分のはずなのです。
 でも、効果額の表を見て分かる通り、「広域事務4千億円を府に統合」による統合効果は微小です。
 わたしは大阪都構想の「二重行政の無駄」という主張には否定的ですが、それでも府市の類似事業を統合すれば一定のコスト削減はできると考えます。(つまり、「守口市と門真市の間に二重行政はないが、守口市と門真市が市町村合併すれば、行政コスト削減は見込める」というのと似た意味です。勿論、「コスト削減できるか」と「市町村合併すべきか」は直結しません。)

 二重行政否定のわたしから見ても小さ過ぎる「広域事務4千億円を府に統合による効果額」は、実は大阪都構想パッケージ案が、本来の類似事業の統合効果の捻出にも失敗した失敗作だと理解しています。この点についての議論は記事「(補1)大阪都構想の統合効果が悲し過ぎる」を参照ください。


 まとめです。
 大阪都構想の効果額は2013年の夏には、年間1千億円とか宣伝されましたが、大阪都構想実現で今後、実際に出てくる財源は再編コストを差し引くと年間229億円。しかも、そのうち149億円は大阪都構想と無関係な効果額で、大阪都構想と関係した効果額は年間80億円、実現は20年後です。第1回府市統合本部会議で打ち出された、年間4千億円の統合効果と比較すると、何ともしょぼくなりました。

 ただ、大阪都構想と無関係な効果額を含めて宣伝されることによる問題は、次回以降で見ていく
【前提2】 特別区の所要人員の試算は、特別区の実際の担当業務の運営に必要となる職員数を試算していないけど、そこは気にしないでね。」とか
「【前提3】 特別区担当業務を5つの特別区で実施することにした時のコスト試算で、歳出額の9割方(厳しく言うと99%)は試算対象から除外してるけど、そこは気にしないでね。
 と比較すると、まだマシだと考えます。
 無関係な効果額を大阪都構想の効果額に積み込む問題は、大阪都構想の効果を過大に評価して、賛否の判断を誤ることでしかありません。何の効果額かを無視するなら229億円という数字は、まだしもアテにできるのですから。

(参考)2015年1月発表の財政シミュレーションから、2015年7月発表の長期財政推計になって変更になった内容・理由などについては、次の記事を参照ください。
長期財政推計になって、変わったこと、変わらないこと(その2)
長期財政推計になって、変わったこと、変わらないこと(その1)


(追記)2015.02.02
(以下、2015年1月の財政シミュレーションベースの当初の記事内容です)
【前提1】 大阪都構想の効果額として挙げたものが、本当に大阪都構想と関係あるかは、気にしないでね。

 大阪都構想の効果額に、地下鉄民営化など、大阪都構想と関係のない、大阪市の市政改革による効果額が含まれていることは、報道でもよく指摘されています。
 前回記事で見たとおり、大阪都構想財政シミュレーションは、今後出てくる効果額は(平成45年度まで待っても)年362億円であることを示していますが、この362億円にも、大阪都構想と関係のない効果額がいっぱい含まれています。

 まず、効果額内訳付きの財政シミュレーションです。(元データ1/17シ-P20 元サイト)(元データ 12/6シ-P14 元サイト
財政シミュレーション(効果内訳有).jpg

 この効果額内訳を、大阪都構想に関係する項目と大阪都構想と無関係な項目に区分して、それぞれ財政シミュレーションの表にしたのが、次のものです。

大阪都構想に関係する項目
財政シミュ効果額仕分(都構想関係).jpg

大阪都構想と無関係な項目
財政シミュ効果額仕分(都構想無関係).jpg

 大阪都構想に関係する・しないの区分は、以前の記事「大阪都構想パッケージ案の効果額仕分け」の効果仕分表を基本にしています。
 大阪都構想に関係する・しないの区分の考え方は、次の通り。
〇「府市の組織を統合することによる効果額」(または、大阪市を特別区に再編することによる効果額)を大阪都構想と関係する効果額と捉えます。
〇より狭い解釈では「大阪都構想でなければ、(大阪府・大阪市のままでは)実現できない効果」というのがありますが、ここでは大阪都構想なしで実現できるものでも、府市の組織統合による効果額は、大阪都構想と関係する効果額と捉えます。
〇府市の組織統合によるものと、無関係なものが一項目になっていて分けられないものは、原則、全体を大阪都構想と関係する効果額と捉えます。

 ただし、「職員体制の再編」(=人員削減)の効果額は、整理が難しいので、次の取扱いにしました。
〇広域側は、効果仕分表に沿って「管理部門を中心に重複部門を効率化」の170人14億円のみを、府市統合による効果額としました。
〇効果仕分表では、広域側で、他にAB項目関係の人件費削減を大阪都構想と関係する効果額と分類していますが、AB項目関係の人件費削減は、AB項目と重複するとして財政シミュレーションでは除外されてますので、これに習います。
〇特別区側について、効果仕訳表では大阪都構想と関係ないとしていますが、その部分の議論は次回の【前提2】で行うこととして、ここでは「大阪市を特別区に再編することによる効果額」として、大阪都構想と関係する効果額に分類します。


 表からは、次のようなことが読み取れます。
〇最終の平成45年度時点の再編コストを差し引いた効果額307億円の内訳は、大阪都構想関係85億円、無関係225億円。(端数処理の関係で、合計は合いません。)

 内訳は次の通り。
(大阪都構想関係)
H45効果額仕分(都構想関係).jpg

(無関係)
H45効果額仕分(都構想無関係).jpg


〇大阪都構想と無関係な項目だけで財政シミュレーションを行っても、特別区(=大阪市)の収支不足解消は平成34年度。これは、大阪都構想を5区案で実施した場合と同じです。
財政シミュレーション当初(全体+無関係).jpg

 この大阪都構想を実施しなくても、無関係な効果額だけで収支不足が解消するという点と関係して、この表を見てください。(元データ 元サイト
維新グラフ_再編効果と現状維持を比較(積算).jpg

 現在、大阪維新の会タウンミーティングで使用している資料です。
 実際には貯まる訳でもない効果額を累積表示にするなど、「統計で噓をつく法」のお手本のような表です。

 ただ「統計で噓をつく法」というのは、数字などは変えずに、その表示のやり方で、印象操作をする方法のことですが、この表の説明には噓になってしまっているマズイ点があります。
 「現状維持 莫大な借金 都構想が実現しないと、平成45年までに、約2323億円の赤字」の部分です。

 2323億円というのは、財政シミュレーションに挙げられた平成27年度から平成45年度の大阪市の収支不足額合計です。でも、大阪都構想の効果額は、大阪都構想と無関係な効果額をいっぱい積み込んだ効果額ですから、「大阪都構想を実施しない場合の効果額」が存在します。
 上の比較表で見た通り、大阪都構想を実施しなくても、大阪都構想と無関係な効果額だけで収支不足は解消でき、「平成45年までに約2323億円の赤字」になったりしないのです。

 大阪市の収支不足との関係でいうと、関係項目だけでみた大阪都構想は、収支不足の厳しい平成33年度までだと、再編コストが効果額を上回っており、収支不足の悪化要因となります。大阪都構想が黒字になるのは、無関係項目で収支不足が解消された後なので、収支不足に対して大阪都構想自体は、役立たずといえます。

 逆に大阪市の収支不足との関係でいうと、収支改善の柱になっているのは一般廃棄物処理の経営形態変更と地下鉄民営化なので、こちらがコケる(実施されない、又は予定の財源効果が無い)と、大阪都構想が実現しても、収支不足解消に深刻なダメージがあります。(そして、どちらもそんなに安心できる内容でもないです。)


〇大阪都構想と関係した効果額だけで見ると、効果額の柱は、特別区側での「職員体制の再編」による効果額91億円です。
H45効果額仕分(都構想関係).jpg

 都構想関係効果額85億円(うち特別区分70億円)(H45)に対して、特別区の職員体制再編の効果額91億円ですから、これが無くなると、大阪都構想関係効果額での黒字化は無くなります。

 でも、特別区側での「職員体制の再編」による効果額って、「大阪市が一体で行っていた事務を、5つの特別区で分割して実施すると所要人員が減る」というヘンな試算が成立しないと、丸ごとコケます。この辺の議論は、次の「【前提2】 特別区の所要人員の試算は、特別区の実際の担当業務の運営に必要となる職員数を試算していないけど、そこは気にしないでね。」で行います。


〇広域事務の統合効果が微小過ぎる。
 大阪都構想って「歳出額1兆7千億円の大阪市のうち、広域事務4千億円を府に統合し、基礎自治体業務1兆3千億円部分を5つに分割する」もの(元データ 元サイト)で、統合効果が生み出されるのは「広域事務4千億円を府に統合」の部分のはずなのです。
 でも、効果額の表を見て分かる通り、「広域事務4千億円を府に統合」による統合効果は微小です。
 わたしは大阪都構想の「二重行政の無駄」という主張には否定的ですが、それでも府市の類似事業を統合すれば一定のコスト削減はできると考えます。(つまり、「守口市と門真市が存在するのは二重行政ではないが、守口市と門真市が市町村合併すれば、行政コスト削減は見込める」というのと似た意味です。勿論、「コスト削減できるか」と「市町村合併すべきか」は直結しません。)

 二重行政否定のわたしから見ても小さ過ぎる「広域事務4千億円を府に統合による効果額」は、実は大阪都構想パッケージ案が、本来の類似事業の統合効果の捻出にも失敗した失敗作だと理解しています。この辺りは、後の記事で取り上げたいと思います。


 まとめです。
 大阪都構想の効果額は年間1千億円とか宣伝されますが、大阪都構想実現で今後、実際に出てくる財源は再編コストを差し引くと年間307億円。しかも、そのうち225億円は大阪都構想と無関係な効果額で、大阪都構想と関係した効果額は年間85億円、実現は20年後です。第1回府市統合本部会議で打ち出された、年間4千億円の統合効果と比較すると、何ともしょぼくなりました。

 ただ、大阪都構想と無関係な効果額を含めて宣伝されることによる問題は、次回以降で見ていく
「【前提2】 特別区の所要人員の試算は、特別区の実際の担当業務の運営に必要となる職員数を試算していないけど、そこは気にしないでね。」とか
「【前提3】 特別区担当業務を5つの特別区で実施することにした時のコスト試算で、歳出額の9割方(厳しく言うと99%)は試算対象から除外してるけど、そこは気にしないでね。」
 と比較すると、まだマシだと考えます。
 無関係な効果額を大阪都構想の効果額に積み込む問題は、大阪都構想の効果を過大に評価して、賛否の判断を誤ることでしかありません。何の効果額かを無視するなら362億円という数字は、まだしもアテにできるのですから。


(追記)2014.03.04
 この記事をアップしたところ、大阪維新の会タウンミーティング資料についての「実際には貯まる訳でもない効果額を累積表示にするなど、『統計で噓をつく法』のお手本のような表です。」の部分に反響を頂きました。記事本文は、当該資料の「現状維持 莫大な借金 都構想が実現しないと、平成45年までに、約2323億円の赤字」の部分が事実と異なることへの指摘が主でしたので、「『統計で噓をつく法』のお手本のような表」について、少し説明を加えます。

 大阪維新の会タウンミーティング資料「再編効果と現状維持を比較(積算)」の元になったデータは、「※数値は、『第10回大阪府・大阪市特別区設置協議会資料 財政シミュレーション(一般財源ベース)』を参照(平成25年12月6日発表)」とありますので、同資料の試案3(5区 北・中央区分離)の次のデータと思われます。(粗い試算ベースAの合計額が▲2323億円で、維新資料の現状維持約2323億円の赤字と一致。再編効果コストBの合計額が2917億円で、維新資料の再編効果額約2917億円と一致。)
追記_元データ.jpg
元データ 元サイト

 このデータは、同じ財政シミュレーション資料の中で、既にグラフ表示がされており、それは次のようなものです。(元データ
追記_法定協グラフ.jpg

 大都市局が法定協議会用に作った表ですが、年度ごとの再編効果額、収支不足額、収支不足解消の年度など、コンパクトに分かるように整理されています。「都構想が実現しないと・・・」といった不正確な記述はありません。

 これと同じデータを使って、大阪維新の会がタウンミーティング資料に作った表が記事本文でも紹介した次のものです。
維新グラフ_再編効果と現状維持を比較(積算).jpg

 同じデータを使っているのですから、元となった推計内容は同じなのですが、表から受ける印象は全く違うものになっていると思います。
 この表を示して、維新の府議さんが「この比較数字を見ても現状維持で大阪が良くなるとでもおっしゃるのでしょうか?」とツイートされていました。

 まあ、こういうことです。

(追記の追記)2014.03.08
大阪維新の会がタウンミーティング資料の「現状維持 莫大な借金」と書かれた赤い部分が、「決算時点の不用額を財政調整基金に繰り入れ、収支不足に備える」という、ごく普通の対応をするだけで、本当に現状維持のままで消えてしまうようです。
詳細はこちらの記事「グラフの赤い部分を、一言で消して見せましょう」を参照ください。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 22:50| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする

2014年03月04日

大阪都構想財政シミュレーション(その3) 今のサービス維持に必要な職員数が知りたいのに

 今回は【前提2】を見ていきます。
 今回の話は、「『歳出規模1兆3千億円の大阪市の基礎自治体事務を5つに分割して経費削減ができる』という試算が、どんな前提の上に成り立つのか」のうちの半分です。(残りの半分は、次回の【前提3】をお待ちください。)

 
【前提2】 特別区の所要人員の試算は、特別区の実際の担当業務の運営に必要となる職員数を試算していないけど、そこは気にしないでね。

 大阪都構想パッケージ案は、大阪市の基礎自治体業務を5つの特別区に分割することで、職員数を平成25年度の12866人から10916人へと1950人削減し、91億円の効果額を上げるとしています。
0042職員体制再編算入効果額2.jpg
元データ12/6シ-P61 元サイト

 でも、大阪市一体で行ってきた事務を、5つの特別区で分割して行うようにすると職員数を15%削減できるというのも、ヘンな試算です。どのような試算がされているか、見てみることにしましょう。

 パッケージ案「2 職員体制」に特別区の職員数の求め方が示されています。
 資料はいっぱいあります(元データ 02-P12 元サイト)が、思いっきりシンプルに言うと、中核市の例として、豊中市、高槻市、東大阪市、尼崎市、西宮市の5市を挙げ、人口10万人当りの5市の平均職員数を特別区の人口に掛けて、各特別区の職員数を算出するというものです。
 中核市権限外の特別区業務の補正(元データ 02-P16)と、大阪市の実情を踏まえるとして「児童相談所」「教育委員会事務局」「保健所・保健センター」「生活保護」についての補正(元データ 02-P17)を加えてます。

 だから簡単にいうと、豊中市、高槻市、東大阪市、尼崎市、西宮市5市の平均の職員数を、特別区に配置するということです。そうすると、職員数を15%削減できるのだそうです。

 パッケージ案はこの試算方法について、「『現行の人員配置をベースに決める方法』と『他の中核市の職員数をベースに決める方法』の2通りがあるが、他の中核市の平均で職員数を決める方が『スリムで効率的な最適な職員体制』だ」と言葉を重ねます。(元データ 02-P4)

 ただ、この試算方法には致命的な問題があります。
 特別区が担当する業務を、この「スリムで効率的な最適な職員体制」で、(質的・量的に同等に)実施できるのか、全く試算も検討もしていないのです。

 特別区が担当する業務は、大阪市の現行業務から、大阪府へ移管する業務を除いた全ての業務です。
 この試算が成り立つためには、「特別区が担当する業務」と「豊中市、高槻市、東大阪市、尼崎市、西宮市の5市を平均した業務」が同量であることが必要ですが、その精査を一切していません。(考え方として、「法定の権限範囲が同等だから、業務量も同等だ」で片付けたいようです。)

 主に業務量の差異が出てくるポイントは2つです。
〇(法定外の)その市独自の住民サービスなどの業務量が同量か。
 例えば、橋下市長は塾代助成事業を始めましたが、当然、法定外の独自事業で、中核市5市は行っていないでしょう。でも、このための事務量は作業項目を列挙すると、馬鹿にできない事務量と分かります。
 このような法定外の住民サービスの業務量を、実際の比較もせず、同量と決め付けてしまうのは、無茶な話です。

〇法定の住民サービスの中でも個々の事務に「合理的な理由に基づく差異」はないか。ということがあります。
 以前の記事「大阪都構想パッケージ案のコスト論」で挙げた例でいうと、例えば、「子ども手当のようなものを念頭として、対象者に申請を呼び掛ける事務」を考えても、「広報紙や掲示板で、対象者に申請を呼びかける」という事務と、「広報紙等に加えて、対象者に申請を呼びかける書類を送り、その送付時に必要事項をプリントした申請書を同封し、受け取った対象者はプリント済み申請書を確認して、記名・押印、送付すれば申請完了」という事務は、住民にとってみれば全く別物です。
 同じ法定の住民サービスでも、どれだけ住民のために丁寧なサービスを行うかで、業務量には当然差異が出てきます。このような差を、実際の比較もせず、同量と決め付けてしまうのは、無茶な話です。

 「特別区が担当する業務」と「豊中市、高槻市、東大阪市、尼崎市、西宮市の5市を平均した業務」には、事務作業量として差異はありそうなのでしょうか?

 これに答えを出すためには、きちんと業務比較を行う必要がありますが、ざっくりとは次のように捉えられると思います。

 通常、事務作業は規模が大きくなる程、スケールメリットが働きます。260万人規模の大阪市が、50万人規模の中核市と全く同等の事務を行っているならば、人口当りの職員数は中核市より大阪市の方が少ないはずです。でも、実際の人口当たり職員数は、中核市より大阪市の方が15%程度多い。
 この差を事務作業量の差として捉えると、「スケールメリット分+15%」の職員数の差が、事務作業量の差であると、ざっくりと捉えられるように思います。

「大阪市が、中核市より人口当たり職員数が多いなら、事務作業量の差でなく、大阪市の職員が非効率なだけだ」という意見もあるかもしれません。根拠は見当たりませんが、その場合についても考えてみましょう。

 もし仮に「大阪市の職員が非効率」というのが事実だったとして、「豊中市、高槻市、東大阪市、尼崎市、西宮市5市並みに特別区の職員数を減らした」からといって、「非効率な大阪市の職員」が急に効率的になる訳でもありません。
 「非効率な大阪市の職員」を中核市と同数配置しても、中核市と同量の事務作業量は処理できません。そのため、この試算の通りに職員数を減らすと、結局、特別区では職員不足で住民サービスに影響が出るという結果になってしまいます。(そもそも根拠が無い仮定ですが。)


 「豊中市、高槻市、東大阪市、尼崎市、西宮市5市の職員数をベースに特別区の職員数を決める方法」の妥当性を示すシンプルな方法があります。
 1区分でいいので、パッケージ案の特別区職員配置案に基づいて、事務担当案を(職員個人単位まで)作成し、現状の事務作業の担当と比較して、無理なく「特別区が担当する業務」を実施することができると示せば良いのです。

 ただ、現状のパッケージ案にそういった検討は、一切見当たりませんし、法定協議会での議論でも、現状との具体的比較の要望に、事務局側は一切の拒否を通しています。
 まあ、ぱっと見ただけでも、パッケージ案の職員配置案で、「特別区が担当する業務」を現状どおり行うなんて、できそうにないので、当然かもしれませんが。


 この特別区の職員配置案のヘンな点を例え話にしてみました。
--------------------------- 例え話開始 ---------------------------
 市子さんは、ガトーショコラが好きです。家でお祝いの時には、お気に入りのケーキ屋さんで、ホール(丸のまま)で3000円するガトーショコラを買ってきて、5人の子どもたちに振る舞います。

 でもある時、「子どもたちも、好きなケーキを選べる方がいいわよね」と、5人の子どもたちに「好きなケーキを買ってきなさい」とお気に入りのケーキ屋さんまで買いに行かせることにしました。
 でも市子さんは、お気に入りのケーキ屋さんのカットケーキの値段は知りません。そこで「そういえば駅前のケーキ屋さんなら、苺のショートケーキが1カット300円だったわよね。」と子どもたちに300円ずつ持たせました。

 子どもたちがケーキを買いに出掛けて、市子さんは考えます。
「あら、ホールで買ったら3000円だったのに、5人が一人ずつ買ったら1500円で済むのね。わたしって、お買い物上手。」

 さて、いつものお気に入りのケーキ屋さんに着いた子どもたちは、ガトーショコラを1カットずつ買うことはできるのでしょうか?
 また、せめて、そのお店でショートケーキは買えるのでしょうか?(お気に入りのお店のショートケーキの値段は、まだ知らないのですが。)

--------------------------- 例え話終了 ---------------------------

 ここまでの説明をすると、「少なくとも特別区で、中核市と同等の住民サービスは受けられるんだよね」と問われることがあります。
 でもわたしは、この中核市ベースの職員配置で、中核市並みの予算額を使うなら、中核市と同等の住民サービスも難しいと考えます。

 理由のひとつは、中核市が、現在の職員数と予算規模で現在の住民サービスを実現しているのは、何十年も工夫と研鑽を重ねた結果です。中核市が政令市になったからと、すぐに大阪市と同等の住民サービスができないのと同様に、政令市の仕事しか知らない大阪市の職員に、中核市の職員数と予算を配置したからと、現在の中核市が行うサービスと同等住民サービスを行うのは無理だと思います。

 もうひとつは、現在のパッケージ案が、案を企画した橋下市長らの都合で、ヘンな所に政令市の尻尾を残しているので、中核市的に最適化した住民サービスができないからです。
 例えば、電算システムは現在の大阪市のものを、ほとんどそのまま使用するとしていますが、システムは仕事のやり方を決めてしまいます。システム利用業務が、ヘンに政令市的な手厚い事務を行うと、それ以外の業務が手薄になって、全体のサービスレベルを落としてしまいます。
 また例えば、現在の24区に支所を置いて、現在の区役所と同等の窓口事務を行うとしていますが、このことは特別区区役所への実務部隊集約の方向性と矛盾します。支所での広範な窓口事務は、かなりの事務負担になり、全体のサービスレベルを落とすことになります。


 この中核市並みを基準とした職員配置の試算方法を信用する気にならない、もうひとつの理由を挙げておきます。

 同じような試算方法を、維新の会は2010年当時も主張していました。
 当時の試算対象は歳出額で、「大阪市の住民1人当たり歳出額60万円に対して、最適な30万人規模の市は平均30万円で行政運営をしている。非効率な大阪市を、最適規模の30万人規模の特別区にすれば、行政コストを半分に効率化でき、効率化した財源で都市成長のための投資ができる」といった主張でした。

 当時も、維新の府議さんへ「実施している住民サービスの差を比較しない、この主張はおかしい」と投げかけましたが、納得できる回答はありませんでした。

 現在、財政シミュレーションが示され、35万人規模の7区案さえ「規模が小さくコストが見合わないので、選択肢にならない」にすっかり変わってしまいました。何の理由説明もありませんが、特別区分割で(人件費以外の)歳出額削減の話は、もうどこにもありません。
 全く同じ理論構成で、「大阪市を最適規模の特別区に分割すると、職員数を減らせる」と言われて、信じる気になりますか?


 特別区が実際に担当する業務を考慮していない「大阪市一体で行ってきた事務を、5つの特別区で分割して行うようにすると職員数を15%削減できる」というヘンな試算が成立しないと、財政シミュレーションはガタガタになります。
 ゼロになるだけで現状より112億円のコスト増ですから、少しでも所要人員が増えるとなると、5区案も(コスト差170億円差の)7区案の状態(またはそれ以上に酷い状態)にすぐに陥ってしまいます。

 でも、橋下市長が法定協議会で、この試算の見直しを断固拒否したとしても、現実がこの試算通りにならないなら、大阪都構想実現後の特別区の運営は職員不足でガタガタになります。
 その時になって、橋下市長が「試算上では問題が起きないことは確認されている。試算通りにうまく行かないのは、区民が選出した区長の責任だ」と責任逃れに成功したとして、区政運営も大阪市民も、酷い目に遭うのには変わりないのです。

 ちゃんと「特別区が担当する実際の業務を、5つの特別区で、現状と量的・質的に低下させることなく実施するための所要人員」を試算しましょうよ。


(追記)2014.03.09
 冒頭、今回は
「『歳出規模1兆3千億円の大阪市の基礎自治体事務を5つに分割して経費削減ができる』という試算が、どんな前提の上に成り立つのか」のうちの半分で、残りの半分は、次回の【前提3】をお待ちください。
 としましたが、次回記事の「大阪都構想財政シミュレーション(その4) 家を建てるなら見積もりは取りたいよ」で、この解説をすると、記事が更に読みにくくなるため、この記事に追記することで、補完とさせていただきます。

 今回の記事で、「特別区分割において、中核市5市の平均値で特別区の職員配置数を決めることで91億円の経費節減ができるとしており、現状の住民サービス維持を前提とした所要職員数の算定を行っていない」ということを見てきました。

 ただ、これだけでは、「歳出規模1兆3千億円の大阪市の基礎自治体事務を5つに分割して経費削減ができる」になりません。人件費以外の経費の増加が、職員数削減で生み出した91億円以上になると、全体では増加してしまうからです。

 そして、次回記事「大阪都構想財政シミュレーション(その4) 家を建てるなら見積もりは取りたいよ」の中で見たとおり、特別区が担当する現行歳出額1兆3千億円のうち、特別区職員の人件費を除いた1兆2千億円部分を、5つの特別区で分割して実施する時のコスト増を試算する時に、「1兆2千億円全体を試算対象とせず、120億円部分のみを試算対象とすることで、コスト増を55億円に止めた」ことを確認しました。

 1兆2千億円全体について、コスト増試算を行っていれば、コスト増の金額は職員数削減による91億円を遥かに上回る可能性がありましたが、全体の1%=120億円部分のみを試算対象にすることで、人件費以外の経費の増加は、91億円を下回る55億円に止まり、「歳出規模1兆3千億円の大阪市の基礎自治体事務を5つに分割して経費削減ができる」という試算が出来上がりました。

 勿論、現実に特別区が担当する現行歳出額の1兆2千億円部分を5つの特別区で分割して実施するなら、試算対象外とした99%部分にもコスト増のなる部分が多分にありますので、試算通りの結果は期待できません。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 18:48| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする

2014年03月08日

大阪都構想財政シミュレーション(その4) 家を建てるなら見積もりは取りたいよ

 今回は【前提3】を見ていきます。
 今回の話は、「歳出規模1兆7千億円の大阪市を、広域事務と5つの特別区に分割した後の運営経費を試算して、1%の運営経費の差が許容できないといった、凄い精度の議論に何故なるのか?」という話です。

 でももっとシンプルに言ってしまうと、「大阪市の基礎自治体事務を5つの特別区に分割して運営する時のコスト増試算は『試算が甘い』というより『試算が無い』だよ」って話です。

 また、先にお断りですが、パッケージ案や財政シミュレーションの試算は一般に、一般財源額を用いていますが、以下の議論は歳出額をベースに話をします。(特別区部分でいうと、歳出額1兆3000億円(元データ パ04-P6 元サイト)一般財源額ペースでは6350億円(元データ パ04-P27)と2倍程度の差があります。)

 一般財源額とはシンプルにいうと、歳出額から(国などからの)特定財源を差し引いたもので、財源配分などの議論を整理するためには有効です。
 ただ、大阪市を5つの特別区に分割した時のコスト増減は、大阪市が発注先などに支払う「歳出額」で起きて、歳出額の変化が結果として一般財源額の変化となるので、歳出額側で捉えた方が分かり易いのです。

 実際、パッケージ案がコスト試算で用いている、システム運用経費の「見積り」やビル賃料の基準にしている「賃借単価4900円/u」は、実際の支払い額=歳出額と思います。
 単に都構想によってシステム運用経費などが上がっても、国などからの特定財源が増える訳ではないので、「歳出額の増」=「一般財源額の増」と用いるのでしょう。


【前提3】 特別区担当業務を5つの特別区で実施することにした時のコスト試算で、歳出額の9割方(厳しく言うと99%)は試算対象から除外してるけど、そこは気にしないでね。

 まず、パッケージ案で「大阪市の基礎自治体事務を5つの特別区に分割した後の運営経費についての試算」としているものを見てみましょう。

 5区案の特別区設置のコスト試算(ランニングコスト)(=特別区担当業務を、5つの特別区で実施した時の現状とのコスト差の試算)は、最新の2013年12月6日資料では、次の通りとされています。(元データ12/6追-P45、元サイト

〇システム運営経費 15億円(総括表の「約20億円」を補正。以下説明の試算明細を参照。府システム増加分3億円を除外)
〇民間ビル賃料 22億円
〇各特別区に新たに必要となる経費 18億円

合計約55億円

 この55億円というのは、コスト増になる金額ですが、元々、いくらの支出が55億円のコスト増になるのかを確認します。

〇システム運営経費 82億円→97億円(元データ 12/6追-P43)
〇ビル賃料 20億円→42億円(元データ 07-P15 元サイト
(執務面積比較では、現有186,609uに対して不足70,757u)(元データ 07-P13)

(「各特別区に新たに必要となる経費」の内訳は議員報酬と各種行政委員会委員報酬のことなので)(元データ 07-P08)
〇議員報酬 17億8900万円→34億8100万円
〇各種行政委員会委員報酬 0円(記載なしなので)→6000万円

 これらを合計して考えると、(執務面積をビル賃料だけで考えたり、各種行政委員会委員報酬の現行を0円で置いたり)少し乱暴ですが、
現行支出額120億円→特別区分割後175億円(55億円増 46%増)
になっていることが分かります。

 システム運営経費、ビル賃料、議員報酬等の現行の合計支出額は120億円。これは、特別区の歳出額1兆3千億円のうち、約1%を試算対象にして、5割増しの試算結果になったということです。


 さて、特別区の特別区の歳出額1兆3千億円のうち、システム運営経費、ビル賃料、議員報酬等の現行の合計支出額120億円以外に、コスト試算をしてないのでしょうか?

 無理に言うと【前提2】で検討した特別区の所要人員を特別区分割の試算を行ったとしたとして、H25職員数12866人×800万円=1030億円に対して、コスト試算を行ったことになります。
 ただし、特別区の所要人員試算は、前回記事で見た通り、「中核市5市の平均職員数で職員を配置したら何人になる」という計算をしただけで、「特別区が担当する業務を、5つの特別区で実施するための所要人員」の試算はしていないので、「大阪市の基礎自治体事務を5つの特別区に分割した後の運営経費」のコスト試算をしたとは、評価できません。

 他には、児童相談所一時保護所の5区・7区への分割配置の試算をしていますが、これは試算してみただけで、(分割配置はしないとして)結果をコスト反映していないので、とりあえず無視でいいと思います。

 そうすると、特別区の歳出額1兆3千億円のうち、コスト試算の対象としたのは1150億円(システム運営経費、ビル賃料、議員報酬等の120億円+人件費1030億円)。歳出額の9割にもなる約1兆2千億円は、何の試算もしていないのです。何の試算もしないまま、コスト増減がないとして、財政シミュレーションを行っているのです。


 コスト試算の方法としては、必ずしも全体の試算をせず、一部だけ試算して全体の推計を行う方法もあります。
 そういう方法に当てはめると、1兆3千億円のうち120億円部分を試算して55億円増の46%増ならば、試算していない1兆2千億円に対しても46%増になるとして5500億円のコスト増が発生するという結果になります。

 勿論、5500億円のコスト増など荒っぽ過ぎて全く信頼性はありません。でも、全体の1%だけ試算して、1兆3千億円全体に対するコスト増が55億円だけなんていうコスト試算は、5500億円のコスト増より更に信頼に足りません。


 ここまで整理すると、コスト試算の精度は結構荒っぽいのに、特別区の歳出額1兆3千億円に対し、170億円=1.3%のコスト差でしかない、7区案の可否が議論されてしまう理由に辿り着きます。

 コスト試算対象にした3項目120億円が55億円増になる部分の荒っぽさは、ある程度共有されます。でも、この試算から、120億円が、200億円増とか、300億円増になるとは考えないでしょう。

 特別区の歳出額1兆3千億円のうち120億円だけを試算対象と捉えると、その試算結果は「10億円程度動くことはあっても、100億円も動くことはない」となります。その結果を、歳出額1兆3千億円全体に対する試算が、100億円も動くことがないという話にすり替わるのです。

 これが、個々の試算の精度は荒っぽいのに、歳出額全体としては1%誤差も発生しないかのような議論になってしまっている理由です。
 歳出額全体の9割方(人件費見込みも誤差を想定しないので、実質99%)を「変わらない」と思い込んで、歳出見込みを立てれば、1%の試算部分が多少荒っぽくても、全体の歳出額は1%未満の誤差しかないことになるのは当然です。


 でも、このコスト試算の捉え方は正しいのでしょうか?歳出額のうち、コスト試算の対象にしていない1兆2千億円部分は、本当に変わらないのでしょうか?

 1兆2千億円部分のうち、変わらない部分も多分少なくありません。代表例として、生活保護費の総支給額は、大阪市全体でも、特別区毎に事務を行っても変わらないでしょう。でも、生活保護の事務経費は、当然変わる部分になります。
 印刷発注費、物品調達費、業務委託費などなど、特別区に分割され、発注単位が細切れにされると、単価アップやコスト増になりそうなものは無数にあります。

 コスト試算した3項目は5割増でしたが、もし平均3割増と仮定しても、コスト試算していない1兆2千億円のうち、5区分割でコスト増になる部分が3千億円もあれば、コスト増は1千億円程度発生してしまいます。コスト増になる部分は全く把握してないのですから、コスト増が2千億円でもおかしくはありません。
 「試算対象外にした1兆2千億円部分は、変わらない」としたパッケージ案の試算前提を外して、実際的に考えれば、5つの特別区に分割した後のコスト増がどうなるかなど、千億円単位で、実は把握していないのです。

 大阪都構想財政シミュレーションは、10億円単位、1億円単位の細やかな歳入・歳出見込みを19年間に渡って示しますが、「試算対象外にした1兆2千億円部分は、変わらない」とした試算前提を外してしまえば、タダの数字遊びです。そして、「試算対象外にした1兆2千億円部分」のうち、それなりの割合は「変わる」のです。


 例え話をしてみます。
 4千万円で建てた家を、2軒の小さな家に建て替えようと思います。
 玄関だけ、建築業者さんに見積りを取ると、前回は玄関だけで100万円だったのが、2軒分の玄関だと150万円になると言われました。だから、2軒の小さな家への建て替え費用に4050万円のローンを組んで、建て替えを建築業者さんへ依頼することにしました。

 あなたは家を建て替える時に、玄関以外の見積もりを取らずに、「前に家を建てた時と建築費は同じだろう」と家の建て替えを依頼しますか?玄関だけの見積もりでは、「前に家を建てた時」より、5割の単価アップが提示されているのに?わたしは、恐ろしくて、そんなの賛成できません。


 大阪都構想は様々に危うい点を抱えますが、特別区歳出額1兆3千億円の大半の部分について、「大阪市の基礎自治体事務を5つの特別区に分割した後の運営経費」の試算をしておらず、実際どんなコスト増が発生するのか全然分かっていないという点は、特別区から住民サービスを受ける大阪市民にとって、最大のリスク要因だと思います。
 統合効果どころか、1千億円単位のコスト増が起きても、何の不思議もないのです。そのコスト増は、特別区の住民となる大阪市民が、身近な住民サービスを削って負うことになります。

 大阪都構想だといって、大阪市一体で運営している歳出額1兆3千億円の事務を、5つの特別区で分割して運営するならば、しっかりとしたコスト試算の上で議論を行い、市民に提示するのでなければ、市民に何を判断しろというのでしょう?

 まとめです。
 支出全体の1%しかコスト試算しないで、再編コストは(府側を合わせて)60億円だとし、特別区でサービス維持に本当に必要となる職員数を試算しないで、人件費削減効果91億円だとし、更に大阪都構想に関係ない項目までいっぱい積上げてた結果、やっと出来上がる財政シミュレーション。でも大阪都構想を実現すれば、現実と掛け離れたシミュレーションとは全く違った現実が、市民を待ち受けることになります。
 こんな財政シミュレーションを見せられて、市民に何を判断しろというのでしょうか?

 大阪都構想財政シミュレーションについての一連の議論は、ここまでです。
 ただ、ここまでの話の中で、取りこぼした話題がいくつかあるので、次回以降、補足の議論として、少し書いてみます。
 例えば、「歳出額1兆3千億円の大半について、5分割して事務を行う時にどんなコスト増が発生するか、全予算の試算をせずに、ある程度妥当な試算を行う方法の提案」とか、「パッケージ案の現在の試算方法の妥当性を、児童相談所の特別区分割配置時のコスト試算と、パッケージ案追加で行われた一時保護所分割配置時のコスト試算を、比較することでみてみよう」とか、そんな話です。
 少し、のんびりした更新になりますが、お付き合い頂けると、嬉しいです。


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posted by 結 at 21:54| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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